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純米ワイングラス?

2021.06.24

CATEGORY:お酒

試飲。

 

 

 

 味わいこそが最大の価値である酒屋にとって、出来上がったお酒の品質を確認する事は言うまでもなく、とても大切な事です。
この試飲の際、お酒とは別に酒器選びもまた大切でして。
と、いうのも、酒器によってお酒の味が変化してしまうからです。

 

超大雑把ですが、

 

 

 ・硬い材質で、見た目にもキレのある造形をしている盃は味が硬質に
 ・柔らかい土などの材質で、やさしい造形をしている盃は柔らかい味わいに

 

 

お酒の味が変化します。
すごく大雑把な傾向ですけど。

 

 

で。

 

試飲の時に評価軸がブレるようでは話になりませんので、日本酒の世界でもいわゆる「試飲用の盃」があります。

 

 

 

■ 盃中央には”北安曇郡酒造協会”の文字が刻印されています。地味にレア猪口。 ■

 

 こちらが杜氏室にあります、蛇の目入りのおちょこです。
陶器製で、口にふれる部分も薄くなく太くなく、バランス感のある厚みがあります。
出来上がった日本酒が「商品」として出荷される前はこちらで味の確認をするのです。

 

 

 

 

 ワインの世界でもこのあたりの事情は一緒。
なので、規格の定められたテイスティンググラスというものが存在します。

このように、酒器というものは、味を左右するとても重要な要素なのです。

 

 

 

・・・と、いふことはデスネ?
酒器というものはある程度、お酒の味わいを変化させるエフェクターとしての機能を有するわけです。

 

 

 より味わいを膨らませるため。

 

 より味わいのキレを良くするため。

 

 より香りを高めるため。

 

 

日本酒の話題というと、とかく「話題のあの蔵の、あの酒!」みたいな部分もありますが、このように酒器という、あまり目立たない部分もとても重要なのです。

 

 

 さて、昨年でしたか?
あのワイングラスで有名なリーデル社が何と、純米酒にフォーカスを当てたグラスを販売したようでして。

 

 

 

■ RIEDEL エクストリーム 純米グラス ■

 

 

 純米吟醸などではなく、あえて純米酒にフォーカスしたこのグラスの性能はどのようなものなのでしょう?
公式WEBを見ると、

 

「とにかく旨味を引き立たせるよ!」

 

「とーにーかーくー旨味を引き立たせるよ!」

 

「U・MA・MI・万歳!」

 

と、書いてあります。

ついでに「ネガティブな要素が感じ取り難くなる」って書いてあったりします。えー!?

 

それではこのグラスを試す前に、まずは蛇の目のおちょこ & 白馬錦の純米酒でメーカー基準となる味わいを確認してみましょう。

 

 

 

・・・。

 

・・・・。

 

・・・・・。

 

 「甘く、華やかな芳香といったものは無縁」という感じで、立ち香はさほどに無く。
口に含むと、酒精のアタック感を基調とした、酒精と酸を合わせたパンチ力を強く感じ、その後で軽い熟香を感じる。
滑らかさとか硬質感といった、もともとの水質をイメージさせないほど、口に含んだ際のパンチ力がある。
カッコよく言えば「これぞクラシカルな純米酒!」という雰囲気があり、刺身や炙った魚介類との組み合わせがバツグンに良いと思われる。
逆に言えば、昨今の「やさしく、華やいだイメージの純米吟醸」とは真逆の、「無骨」な純米酒といった印象の味わいだ。

 

 

 

 

 

基準となる味を確認した所で、「エクストリーム 純米グラス」で同じ純米酒をテイスティングしてみます。

 

 

・・・。

 

・・・・。

 

・・・・・。

 

 

 立ち香の中に少しだけ甘み交じりのセメ臭があり、おちょことは段違いに立ち香が昇っているのが分かる。
このグラスを使用する前に洗っていると、少し恐さを感じるほどにガラスの薄さを連想させるのは所謂「うすはりグラス」と同じか。

 

その質感からして、かなりキレ味が増すのではないかと予想していたが、この予想は大きくハズれた。
酒を口にすると、先のお猪口では強く感じた酒精のアタック感がかなり緩和され、ある意味で全体の味が優しくなっているのが分かる。
熟香もナリをひそめ、まさに酒精&香気成分がグラスの見た目通りに飛んでいる事を伺わせる。
その結果として謳い文句通り、酒中には旨味だけが残り、その味わい(コク)”だけ”を存分に堪能できるグラスであると感じた。

 

 本グラスを使うにしたがい、グラス内の酒の滞留時間が長い程、酒の量が減るほど、グラスの効能が強くなるのを感じる。
音楽機器の世界で言う所の「プリセット・イコライザー」感があり、良いも悪いも、元の酒から割と多めに酒精と香りを飛ばすグラスであることを確認できた。
香りの高いお酒を注ぐと、その酒の良さがスカスカになりかねないあたり、なるほど、「純米」と謳うワケだ。

 

 ひとつ言えるのは、本グラスは「使用すれば何でもかんでも美味しくなる魔法の酒器」ではない。

「味の荒い部分をちょっと往なす」というレベルではなく、相応に酒の特性を取り払う。

ある程度お酒の事が分かっていて、酒の方向性を少しイジりたいシチュエーションが生じ、酒と酒器の特性がマッチした際に、有用となるグラスであると感じた。

その見た目のカッコ良さも相まって、「酒器を変えれば、酒の味も変わる」ことを初めて体感するのにはもってこいのグラスであると言えるだろう。

 

 

・・・とまぁ、カッコつけたレビューを書いてみましたが要するにデスネ、「酒器はお酒の味を左右する重要な要素ダヨ」というお話しでした。マル。

 

 

酒造り