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2022年・冬の新酒

2022.12.10

CATEGORY:お酒

災禍を超えて

 

 コロナ前、時に「〇〇経営セミナー」うんぬんといった講習会に出たりすると、「今の世は戦国時代!激動の時代をどう生き抜くか」だなんて良く耳にしたものである。

 

何かもう、「ハンバーガーにポテトのセットはいかがですかぁ?」並みにテンプレじみているので、この言葉を聞くと「いい加減、そろそろこのフレーズも変えませんか?」と、思わず質問タイムの際にその場を氷づかせてしまいそうな黒い衝動に駆られてしまう。
さりとて、「24時間、あなたは労働し続けられますか?」と言われるのはイヤだが、いっその事「戦え!光の戦士たちよ!」と言われた方が、メロディアス・ヘヴィメタルを聞いてきた自分にとって、まだマシなフレーズのように思う。
もっとも、そんなフォーザキーンな先生は講演会の講師として招かれることはないだろうが。

 

 そもそも時代は常に変化するものだし、ましてコンピューターや通信技術がこれだけ極端に発達した今は、その変化のスピードたるや昔とは比べ物にならない事に異論はないだろう。

 

だが、この数年についてはまさに「激動の時代」以外の何物でもない。

 

我々はコロナ禍を生き抜いてきたのか?科学技術と通信網の発達でコロナは”よく知る敵”になったのか?集団免疫をそれなりに獲得したのか?単純に慣れてしまったのか?それとも一種のあきらめだろうか?

 

いずれにせよ、「本当にドえらい一年」がもうあと僅かで終わりを告げようとしている。

 

 

 そんな年末の最中、いよいよ長野県の清酒「白馬錦」より、冬の新酒が発売となる。
今回の本ブログでは本年を締めくくる、これらの新酒に迫ってみるとしよう。

 

 

 

 

 

白馬錦・冬の新酒

 

 

■ 初しぼり 純米生酒 &うすにごり 純米生酒 ■

 原料米:長野県大町産ひとごこち  精米歩合:65%
 アルコール度数:16%   日本酒度:-3

 酸度:1.4   アミノ酸度:1.2

 (※.どちらも分析による成分値は同じ)

 

 

 デザインそのものの方向性は、ここ二~三年来の「シン・白馬錦」を踏襲している。
だが、いわゆる「紙のラベル」ではなく、「樹脂製の半透明ラベル」をチョイスしているのは、(特殊案件を除けば)恐らく白馬錦の商品群で初の採用ではないかと思われる。

 

 

 

 

■ 昨年の冬酒 ■

 

 前作の「しぼりたて無濾過生原酒」と「きぬごしにごり生(にごり酒)」と比べてみると、そのソリッドかつシャープな質感が何とも現代的である。
写真で見るよりも手に取った方が、その硬質感がいっそうリアルに感じられる。

 

 そして見た目だけではない、”物理的に”これまでの冬酒とは酒質が違う。

「初しぼり」は完全な無色透明ではなく、少しだけ「にごり」が混じり、「うすにごり」はいわゆる「にごり酒」でない、これまた白馬錦としては珍しい「うすにごり」といった設定がなされている。

 

 

 

■ 封を切る前にまずは酒全体をゆっくりと回して撹拌するのがコツだ ■

 

 

 それでは、味の方はどうだろうか?
冷蔵庫からラベルを貼り終えたばかりの酒を取り出し、酒瓶を逆さにしてゆっくりと回しながら酒全体をかき混ぜてから試飲を行い、味の方を確認してみた。

 

 なお例によって、本稿におけるレビューは2022年12月10日現在の印象を綴ったものであり、月日が経った際に味の印象は大なり小なり変化がある事を予めご了承頂きたい。

 

 

 

 

< 初しぼり 純米生酒 >

 

 

「カラッと入る!」

 

 味の厚みや甘さ、香りが淡い故に酒精”感”が押し出される形になり、結果としてそれは「サッと口に入る、ライトな日本酒」といった装いになっている。

繰り返すが、酒精感が(割合的に)一番強く感じるのと、全体的なバランスの妙なのだろう、白馬錦にしては珍しく、やや硬質な感じすら漂う。

 

後に若干の渋みもあるが、ここ最近はそういった「後の渋味」も許容範囲ないであると感じることも多く、むしろこの後味あればこそ、「水じゃない、これはお酒なんだ」と感じるほどだ。それほどまでに口当たりがイイ。

人によっては三杯飲むまで「これ水か?」なんて思う人もいるかもしれない。
それくらいにライトな酒質に仕上がっている。

 

とは言え、アルコール度数は16%なので、飲み過ぎは禁物である。

 

 

 

< うすにごり 純米生酒 >

 

 

 主軸は先の「初しぼり」と同じだが、にごりの度合いが強い分だけ、舌先の米粒感とそれに伴う味の厚みがグっと付与される。
それでも「香りの高さ」や「万感ある甘み」、「熟れた熟感」といった”演出”でキャラクターを確立させているのではなく、味や風味というよりも、サッと駆け抜ける「これぞ日本酒!」といった味わいが感じられる。

それでも見た目から来る印象からすれば、「そんなに重くない」。

言葉通り、舌の上に触れる米粒の大きさもまさに「うすにごり」といった粒度になっている。

 

 出来たての酒ということもあり、舌の上でピリリとした炭酸が弾ける。
面白い事に、杯を重ねると、唐辛子のカプサイシンを連想させる「辛さ」を微かに感じる程だ。先の炭酸が舌の上で案外と残っているせいなのかもしれない。

 

焼肉やキムチなどの料理との相性がとても良さそうに思われる。

 

 

 

酒屋に出来ることは、旨い酒をお届けすること

 

 ここ数年、白馬錦の「できたて酒」はどちらかと言えば「しっかりとしたコク味と、それを引き立てる必要十分な甘さ」といったニュアンスがあったが、本年の新酒はどうやら味の濃密さや香りの高さではなく、どこか一本槍感すら漂う、柔和な男酒に仕上がったようだ。

 

 まだまだ白馬錦の今シーズンの酒造りは始まったばかり。

今年の白馬錦の味わいを占うべく、この年末に一献、傾けて頂ければ幸いだ。

 

 

2022BY 白馬錦・冬の新酒「初しぼり 純米生酒」と「うすにごり 純米生酒」は12月14日(水)発売です。

 

 

 

酒造り