le lac(ル・ラック)
2022.03.18
CATEGORY:お酒
ここ数年では見られなかった、膨大な雪も気がつけばサラリと融けて消えた。
あの雪かきの日々と、道の両脇に作られた雪の塊はいったい何だったのか?
確かに現実のものとしてあった雪が、どこか夢物語のように思える三月中旬。
春の息吹を通り越して、どこか熱線を感じさせる太陽光が眩しい今日この頃である。
そんな中ふと、白馬錦の公式WEBサイト上にあるメニューバーに目をやると、
何やら「限定酒 le lac」(ル・ラック)なる、見慣れない文字がある。
「ハテ、何だこれは?」と、クリックしてみると・・・
「白馬錦 無濾過原酒 le lac」なるページが出てきた。
少しページを下げてゆくと、コンセプトが書かれている。
北アルブスを源とし、大町に連珠状に連なる木崎湖、中綱湖、青木湖の仁科三湖。
保水力に優れ、豊富な緑に覆われた大町市の大地に
降りそそいた雨はゆっくりと時間をかけて地中に浸み込んでいきます。
それはまるで天然のフィルターのように雨水を濾過し、
美味しい地下水を作り出す「自然の水工場」。
わたしたちはそんな自然の恵みに敬意と誇りを込めて、
フランス語で湖をあらわす「le lac」と名付けました。
ご存じ「清酒 白馬錦」は、長野県大町市界隈で栽培した酒米を、大町市にある蔵で、大町に住む人たちの手によって醸された酒である。
白馬錦は言うまでもなく日本酒であるが、「日本酒」というよりは「地酒」といった方がピンと来るだろう。
それだけご当地感にこだわる酒であり、地元の飲食店ではもとより、「長野県に来た際のお土産品として使われる酒」というイメージがある。
これに対し本「le lac」のラインナップを見ると、必ずしも大町産の酒米を使用しているワケではない。
また全ての商品に「無濾過原酒(生)」と書かれている。
「白馬錦」と「le lac」との違いをまとめてみると・・・
1.le lac のラインナップ全てが純米吟醸以上のグレードである。
2.le lac のラインナップ全てが無濾過原酒で構成されている。
→ 味わいは比較的「華やかさ」を優先としている。
3.le lac のラインナップ全てが瓶貯蔵 & 冷蔵管理である。
4.酒米は必ずしも長野県産米ではない。
→ ご当地感より、味のバリエーションの豊かさの方を優先。
5.全国エリア/主に地酒専門店で販売されている。
6.同グレードの一般商品と比べると、若干値段が高い。
※注.2022年3月現在。
といった特異点を持つ。
いわば「日本酒専門店にわざわざ足を運ぶほどに銘柄や産地、使用米、醸造方法や貯蔵方法、作り手に対するこだわりがあり、日本酒が好きな方」に向けられた商品群と言えよう。
手っ取り早く言えば、「好事家に向けて醸された日本酒」であり、(株)薄井商店的には「観光/お土産用途ではなく、コダワリの逸品」といったセグメントに向けてリリースされる限定酒であると言える。
いつもと違う、別の形での意気込みを感じさせる本作。
それでは肝心の味はどうなのか?さっそく試飲してみよう。
■ le lac リリース第一弾
純米吟醸 無濾過原酒(生) 美山錦 仕込み
原料米:大町市産 美山錦 精米歩合:55%
Alc:15.8% 日本酒度:-1 酸度:1.3
「軽やかだ。」
純米吟醸無濾過原酒(生)という、「イチバン風味の濃い酒質」を連想させる内容であるにかかわらず、まず最初に感じるのはその軽やかさだ。
酒米由来の甘さをベースに、青りんごをイメージさせる清涼感のある酸味と香りがごく僅かに感じられ、それがより一層、お酒全体の軽やかさを演出する。
白馬錦の「しぼりたて」あたりの太さや、秋の季節酒「秋熟」のジューシィさよりも一枚二枚、軽いタッチである。
原酒らしい原酒ではない。いわゆる「アルコール度数の高いお酒に水を加えて15度とした」酒ではなく、「最初からアルコール15度になるように作った原酒」という装いだ。
これによってもたらされるのは、「芳醇なふくよかさを湛えている酒」ではなく、「朝露の後の草原」とでもいうべき、色彩ある、爽やかさと柔らかさを兼ね備えた質感である。
液中に溶け切れていない酒米の粒子を僅かに感じる部分もあるが、これは将来的に寝かせてもウマくなる「伸びしろ」を予感させる。
軽やかながらも、一本調子でない、様々な顔を見せる酒に仕上がっていると感じた。
お陰様で「値段がちょっと高いけど、味が良いから取ってみるヨ」と、少しづつではあるが販売店からのお声がけも頂くようになった本作「le lac」。
「白馬錦」ブランドに対するイメージはひとまずリセットして、「松浦杜氏が醸す、こだわりの一本」をこの機会にぜひ、お試しいただければ幸いである。
※.「le lac」は白馬錦WEBで販売しておりません。
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